私が子どもの頃、プラッシーというオレンジジュース的な飲料水があった。
それを買うと、世界の名画のカードがもらえた。
それを必死で集めたなあ。
小学校に上がる時に買ってもらった百科事典も絵画の巻ばかり眺めていた。
そんな私が、初めて本物の絵画鑑賞をしたのが専門学校に通う為に大阪に出てきてからだ。
最初に行った展覧会の名前は覚えていないけど、
1枚の絵だけは今も鮮明に覚えている。
ミレーの落穂拾いのような世界。
農民を描いた作品で、女性の農婦が横一列に並んで全員が向こうを向いている。
顔は見えないが、皆が楽しそうにしている雰囲気があった。
その絵の人々から、
今日も1日頑張ったなー
みたいな満足感を感じた。
いい気持ちだなーと思いながら眺めていると、
女性たちの話声が聞こえてきたような気がしました。
何のことはない普通の会話。
「今日は~だったね」
「あ!落としてるよ。拾わなきゃ!」
とか。そーゆーの。
あんまりにも楽しそうで、仲間に入れて欲しくなった私は思い切って
その中の1人の肩を叩いてみた。(一応妄想で)
思い切り無視されました。(笑)
一緒に汗水たらしていない私の声なんか聞こえないのね…
と自分を納得させましたよ!
その絵のポストカードは売ってなかった(涙)学生で貧乏な私は図録は買えなかった。
おかげで未だにこの絵の名前や作者が分からずじまいだ。
なんかこーゆーの。
下手すぎてよーわからんですね。
構図はこれで、ミレーの落穂拾いタッチに変換して想像してください。
それからあちこち展覧会を観に行くようになった。
そして私の聴覚は研ぎ澄まされて行った!!
視覚は?(笑)
人物画で目線があう人からは、結構しゃべりかけられる。
(大丈夫、変な薬飲んでません!キッパリ)
これまたなんて絵か覚えてないのですが
市場で買い物する女性が一人だけこちらを向いている絵がありました。
この女性は間髪居れず
「家来る?」と言ってきた。
「家族多いし一人増えても二人増えても一緒!ご馳走するよ!」
と誘ってくれた。
凄く行きたかったが物理的に無理で残念だった~
ちょっと違いすぎる…がこんな風な構図かな…
後、弾丸で喋りかけてくる少年とか。
この子は
「僕ね僕ね~」と
弾丸で自分の事を話して絵から離れても
どんどん喋ってきた。
寂しいのかな?窓から覗いている。
もしかして外にあまり出られないの?
お母さんにほっとかれてるのかな。
頭がキンキンするほど止め処なくしゃべっていた。
帰るときにゴメンネ帰るねって声をかけた。
大丈夫ですか?
こいつやべえになってます?
すんません。聞こえちゃうんですもの。
だから私は基本は一人で人のあまりいない曜日に美術館に行く。
だって喋りきりたいやん?
美術館での天敵は、えらそぶって若い姉ちゃんに
「この絵の時代背景はねえ」
なんて説明してるおっさん。
う
る
さ
い
い
い
そして、全ての絵に面白おかしくセリフをつける
私の娘!
おもろいんよ。おもろいよ。
でもな、お母ちゃんもう、そう言ってるようにしか聞こえへんよーになるやろ?
私には史実も新しい解釈もいらない。
画家が魂込めた絵を観て対話するだけ。
魂が共鳴すれば気持ちが聞こえてくる。
それだけの思いを込めて描いてはる。
だから今も残ってる絵なんだと思える。
声を聞くために絵に逢いにいくのだ。