「おかあさ~ん」
キタ。
又来おった。
「今日な~」
もー。
面倒だなあ。
「遠い方のローソンあるやん」
「はいはい」
「あそこの道でなー蝶々がふらふらしとってん。」
「はいはい」
「ヤバイ思ってなーソッとつかんでみたら、羽が切れててん。」
「ほー」
みたいな感じて何となく聞いていた。
道の脇の植え込みにその蝶々を避難させて、自転車に乗りしばらく進んだが、その場所の環境が悪い気がして引き返したそうな。
花がなく、食べ物が無い所ではすぐに死んでしまう…
娘は考えに考えた。
そして、そこから200mほど離れた自宅に近い場所の植え込みを思い出したようだ。
娘は又そっと蝶々を両手に包んで、その場所まで運んだ。
そして花のある植え込みに蝶を置き、自転車を取りに引き返したとのこと。
「そうか、ええことしたなあ」
そう言っても娘は浮かない顔をする。
「私、間違ってなかったかなあ。ホンマにあの子にとって良い選択だったのかなあ。」
エーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まあ…
そりゃあ…
100%は正しいかどうかわからんけど…
娘はさめざめとした顔である。
「道端より花が無い所よりええよ。」
「そうかなあ、そうかなあ」
その子が長生きできるかはわからない。
自然は厳しいから。
しかし、娘はその蝶々を助けたかった。
そして行動した。
エライ。
どうか
どうか
蝶々が少しでも長生きしますように。
娘が放した場所を喜んでくれていますように。