これも今更ながら観た。
もう15年前になるのか。そりゃあ今大活躍の柳楽優弥が子どもだったんだから。
このビジュアルが公開されたときは衝撃でした。
こんな美しい少年、なかなかいないじゃないですか。
うっとりしたものです。
しかしこの映画の内容はネグレクトという児童虐待を扱った映画。
ただ単に彼の美しさに見とれているわけにはいかないようでした。
当時私の娘たちも小学生くらいでした。
だから、自分の娘と同じくらいの子どもがひどい目に合うのを観る勇気がなかったんです。
確かに今観ても胸くそ悪いのかもしれない。
同じ是枝監督の「父になる」も、もーほんま辛くて観ていられなかったし…
でも今観なきゃ永遠に観ないかもしれない。
カンヌで最優秀主演男優賞をもらった柳楽優弥の素晴らしい演技…みたい…
意を決して観てみました!
乾燥
いや感想
是枝監督怖!!!!!!
こわーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
なんなんこの人…
こう撮る?
こう描く?
…
とにかくこの映画は全体を通して坦々としている。
そりゃあもう一貫して。
一貫一徹。
お母さんに捨てられて小さな子どもたちがボロボロになってるのに。
普通に普通に撮っているのだ。
そして何も解決しないまま日常が続いていく。。。。
題材的にもっと陰惨に描くこともできただろうに、子ども達の可愛いしぐさや表情だけで構成されている。
シーンをひとつひとつだけ切り取って観ていると、可愛らしくて微笑ましい画像。
それが怖い、、
ここでハタと思いました。
だから虐待は気づかれにくいのかも…
子どもの愛くるしさで虐待のサインが隠されてしまうのかもしれない。。
母親は明るくキュート。
子どものそばにいる時は優しくて、甘いキャンディみたいな人。
こんな人が何も悪びれず、子どもを放置しているなんて想像がつかないだろう。
しかし、子どもがいることを隠すために子どもをトランクに入れて運んだり、学校に行かせるどころか家から一歩もださないようにしている。
恐ろしく常識からかけ離れているのだ。
目に見えない恐ろしい暴力。。。
そんでね、、
柳楽優弥演じる長男(明)が涙ぐましいんですよ!
心から弟や妹たちを愛しているのがひしひしと伝わってくる。
母親が家に帰らず、お金も底をつきそうになっても必死でやりくりをしている小学6年生…涙
電気もガスも水道も止まり、トイレと洗濯は公園。
飲み水も公園の水を汲みに行ってしのぐ生活。
その姿はとても平成とは思えない風景だ。
母の昔の男たちも子どもたちには構っていられない。明が行くとほんの少しのお金をくれるだけ。
いつも行くコンビニ店員の女性は母親が帰らないと知っていて、明に警察に行くように促すが「弟や妹と分かれ分かれになりたくない」と言われ言葉を飲み込む。
同じコンビニ店員の男性は明に賞味期限切れの食品をそっと渡している。
同じ孤独を抱える女子高生は彼の為に援交をしようとする。
…
みなさん…気づきませんか?
誰も知らないなんてことないんですよ!
知ってるやん…
この子たちが放置されているって知ってるやん!
みんな小さな親切はしているかもしれない。
でも…
もしかして…こういうときどうしていいか「誰も知らない」のか?????
そんなことを考えながらもひとつひとつのシーンで胸がきゅっとなる場面がいくつかあった。
天真爛漫すぎる次男の表情がだんだん無になってくる所はぎゅっとキタ。
あ~彼なりに今の状況を把握していっているんだな、、、ということが伝わる。
凄い子役だなと思いました。
やんちゃな時と無の時の演技の差が激しいんですよ。是非注目して欲しいです。
空地で植物の種を集めて家のベランダで育てているのですが、カップラーメンの容器を植木鉢にしているんですよね。
最初に一人ずつ容器に名前を書いて行くんです。
一番下の妹が書こうとしたときに明がそっと妹の手に自分の手を添えて一緒に書いてやるんです。
その手がもう!もう!!!優しさと愛の塊で!!!!!胸がきゅーーーーーーーん!!!!としました。
本当に妹を慈しんでいるのがわかる場面でした。。。。
それともう1つ。
明がやっとできた友人に万引きを強要されたけどやらなかったシーンがあります。
でも最後、妹の為にあぶら汗をかきながら万引きをしてしまうんです。
あの苦しそうな明の顔…
くううううううう!!!!!!!
是枝監督の映画は気軽には観れない。
ふん!と気張ってみなければいけない。
真実すぎるからだ。
過剰な演出もドラマティックな展開もない。
ファンタジー性は全くない。
本当にそこにいるように描いているからだ。
だから日常のまま終わる。
人それぞれ色んな事を感じるのだろうな。
「誰も知らない」だけでそこにある現実。
そうかそれか。