だんなの実家の片付けがようやく佳境に入った。
最近手伝いに行けていないことが気になっていたのでこの日曜日に片付けに行って来た。
だんなの根気あるねばりにより、ゴミを片付ける業者からガラクタと宣言されたものがお金になった。
このお金はお義母さんの為に使う。
だんなからすれば「むちゃくちゃ片付いた」だけど、私からみると寒くなるほど何も変わってない!
だって来週ここ空け渡しするんだよね…
やっとこの日にざっと片付けると聞いていたのだが、業者ではなく知り合いにお願いしたようだった。
本日で家を空にできると思っていた私からしたらぼ~ぜんである。。。。
前にお義父さんが私に言った。
息子が裏の倉庫にキチキチに本をつめているので片付けるように言ってくれと。
そのキチキチをやっとだんなが崩し始めた。
ようそれだけあるなというくらい雑誌の切り抜きを運び出している。
その間、私がやったのは壁に貼られたおびただしい数のポスターをはがすこと。
義母は絵画(特に印象派)が好きだ。
印象派のカレンダーを毎年飾っていて、お気に入りの絵は日付の部分を切り取り家のあちこちに貼っていた。
特に圧巻だったのは階段だ。
階段の両壁にびっしりとカレンダーが貼られていた。
改めて見ると、ぜいたくな美術館だ。
これだけの絵画が一堂に会しているのだから!!
ルノアールの幸せな春の日差しに包まれた素敵な空間。。。
でも、この美術館も取払わなくてはいけない。
私は思い切って一つひとつ剥がしていった。
かなり昔から貼ってあったのだろう。剥がすとテープがついた部分の壁も一緒にはがれる。
はずしてしまうと真っ白な壁が顔を出して春の日差しから冬の寒さを感じた。
お義母さんはお金持ちのお嬢様だった。
お義父さんと結婚してからは貧乏暮らしだったと思うが、そんな中でも美しいものを愛する豊かな心は大切にしていたのだろう。
そんなお義母さんの美術館を壊してしまい胸が痛んだ。
次はトイレだ。
トイレは大好きな犬のポスターが所狭しと貼ってある。
これも外す。
先日お義母さんのホームへ犬のカレンダーを持っていった。
その時は喜んでいたが次に行った時は剥がされていた。
お義母さんが剥がしてくれとホームの人に頼んだらしい。。。
そんな事を思い出しながらトイレの壁も真っ白に返す。
だんなの紙ものとお義父さんとお義母さんの本類も外に出す。
図鑑も多く腰がくだけそうだ。
だんなが古紙回収の会社に電話をして引き取りに来てもらった。
古紙回収の人が「こんなにあるなんて!!!一旦帰って車を空にしてきますわ!」と言うくらいの量だった。
整理中に私は明治時代の英和辞典を見つけた。
これは珍しいのでとっておいた。
お義母さんが受け継いだものなのかしら。。
それからだんなの知り合いの方がトラックで来てくれて、バサバサと家の中の者を運んでくれた。二階から20人くらいが使えそうな量の布団を投げ落とす。
すごく小さくて狭い家なのになんでこんな布団があるのか…
だんなが売った陶器類はコンテナ箱にゆうに20杯はあったという。
いつどんな風につかうつもりだったのか。。。
私も早く色々始末しなくてはいけない衝動にかられる。
あれだけものを溜め込むだんなでさえそう考えるようになったようだ。
それと義弟は全く家の片付けには来ない。
一切なにも手をつけない。
私物だけは持って帰ってと半年以上前から言っているのに。
どうして兄に任せきりなのだろう。
近くに住んでいるのに。
少々腹立たしい思いでいたが、私達が早く結婚したので独身の彼にはかなりよくしてもらったので恩返しかなと思いなおした。
でも…もしかしたら…
彼は家がなくなることに耐えられないのかもしれない。
見られないのかもしれない。
だんなはそれを知っているので黙って一人で片付けをしているのだろうか。
遺影のお義父さんは変わり果てていく自分の城を笑顔で見ている。
お義父さんの思っている未来と違くてごめん。
お義母さんの愛しい空間を守れなくてごめん。
なにもできなくてごめん。
お義母さんの美術館はタンプカーに乗って行った。
今度ホンモノの美術館へお義母さんと行こう。
行こうねお義母さん。