Gardenがーでん

ひとりの主婦の小さな世界 

罪人は私たちの方なのか 映画「世界一美しい少年」を観て気づいたこと

ビョルン・アンドレセン

この人に興味を持ったのは御多分にもれず、

「ベニスに死す」と言う映画だ。

いや、ネットで流れて来る美しい少年に魅了されて彼見たさにベニスを観たんだ。

 

www.majoranaair.com

 

どんなシーンでも彼は完璧に美しく、映画を観ている間私のため息は止まることは無かった。

頭の中には彼の残像が消えない。

だってこの世の美を全て詰め込んだような少年なんだもの。

そこまで夢中になると彼がどんな人生を歩んだか気になりますよね。

 

調べると、色々な記事が出くるので読んでみました。

人気者ゆえ辛い思いもされていたようなことが書いてあるけど、、、

実際、彼は何を思っていたのだろうと気になっていた。

 

なのでこの映画の公開を知った時に、彼の真実を知ることができるのではと期待しました。大坂ではシネリーブル梅田で一日一回だけの公開とのこと。なんとか時間を作って行きました。

 

入口で公開記念のビョルンのサイン入りポストカードを頂く。

メチャ嬉しい。

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カードとパンフ

 

お客さんは女性が主かな。男性もいた。

ロリータファッションの若い女の子の2人組がいて楽しそうにおしゃべりしている。

しかし、この映画が終わるころ彼女たちは別人のように押し黙ることになる。

 

映画が始まった途端!あ、これ私がアカンやつや、、と確信。

暗闇の中から子どもが母親を呼んで泣いている声がする。

それに合わせてもの凄く不穏な音楽が大音量で流れる。。

端っこに座っていたら怖すぎて泣いて飛び出していたかもしれない。

必死で耐えた。

場面はベニスに死すのオーディション場面に移る。

いきなり裸になれと言われて戸惑うビョルンの姿。

ああ。

地獄なんだ。この曲は彼の地獄を表現しているんだ。

冒頭で既に胸が潰れそうになる。

 

映画は現在のビョルンの暮らしをベースに過去の映像を折りまぜながら進む。

 

 

現在のシーンで衝撃だったのが、住んでいるアパートを追い出されそうになっているくだり。ガスをつけっぱなしだとか、持ち上げると崩れてしまうほどほったらかしの寝具で寝ているとか、、、まるで認知症の老人かのような姿。

たしかまだ60代のはずなのに。。世捨て人のような暮らしじゃないか。。

 

過去の映像で一番驚いたのは「ベニスに死す」の記者会見か何かで、ルキノ・ヴイスコンティ監督がビョルンがフランス語が解らないからと、ずいぶんな暴言を吐いていたことだ。「もう彼は歳をとってしまったから」「年寄りだ」と言っていた。記者たちも

はははははははははと笑っている。

何これ。

汚い。

 

は?

どの口がゆーてんの?

誰のおかげでここまで話題になったと思ってるの?

自分の才能だけでとでも???

ジジイがよくもまあ少年に向かって年寄り言えたな!

おい!記者!何笑ろーとんねん!

お前らの中にビョルンと同じ影響力を持ってる奴なんているのか?

いねーだろ!

 

と、こんな風に叫びたかった。

そして彼をその場から救い出したかった。

誰一人としてそれをしなかったんだ。

誰も。誰も。

 

監督はその後、彼を汚い大人の世界へ捨てるように放り投げ放置した。

そしてステージママの祖母は彼を日本で働かせた。

 

私は幼くて覚えがないのだが、ビョルンは日本でCMに出たり日本語の歌を出したりしていたそうだ。

その映像も流れた。

もし少女時代にそれを見ていたら私は病的にのめり込んでいたかもしれない。

それもそのはず、私が夢中になって読んでいた漫画たちに多大な影響を与えていたからだ。

 

この映画の中で池田理代子先生がビョルンにオスカルは貴方がモデルだと仰っていた。

(ここでベルばらのアニメがやたら流れる。なぜアニメ?外国人にはアニメの方がわかりやすいからなのか?)

この事からわかるようにビョルンは私たち世代の美の象徴なのだ。

 

日本でも多忙を極めていた彼は薬を飲まされながら働かされていたという。

今では考えられない事だ。

彼は日本が大嫌いにならなかったのだろうか、、、

何十年ぶりに日本を訪れたビョルンはとても嬉しそうで、日本が好きと言ってくれている。。。

ほんとに?嫌なことを思い出さない?と心配になった。

ごめんねビョルン。私たちは熱狂するばかりで貴方を大切にしてあげられなかったね。

 

ビョルンがカラオケでかつて日本で出した歌を歌っているシーンがあった。

覚えていてくれたんだね。ありがとう。

 

映画を観ていてこれは本当にドキュメンタリーなのか?と疑ってしまう所が多々あった。彼が自分を置いて亡くなった母の真実と向き合う所とか、、乳幼児突然死症候群で亡くした息子さんのお話とか。。普通なら撮られたくない場面だと思うから。

でも彼は挑んだ。なぜに?

 

自分のような思いを他の子どもにさせたくない

 

その問題定義を自分の全て使って訴えているかのようだ。

彼を観ていると10代の頃から時が止まっているように見えた。

そんな彼が一歩を踏み出すため。勇気を出してカメラの前に立ったのかもしれない。

 

美しさは罪なのかという問いかけがあるが

美しさにただ熱狂する大衆の方が罪人なのかもしれないと気づかされた。

 

美しい人も同じ人なのだ。

その事を忘れずにいなければ。。。

 

 

ビョルンごめんね。そしてありがとう。

あなたの思いを忘れないようにするね。

 

gaga.ne.jp

 

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